ブランドセキュリティが守るものとは

ネックストラップをするスタッフ一同

ブランドセキュリティが守る対象は、ひとことで言うと「ブランドイメージ」です。ブランドイメージが毀損される(傷つけられる、損なわれる)と、そのブランドをになう法人や個人には大きな経済的損害が生じます。2015年のアメリカでの調査では、1件のブランドイメージ毀損で生じた損害額の平均は、中小企業で3万8000ドル、大企業だと55万ドルにも達します。

消費者の信用低下、売上の低下などによる直接的な経済損失のほかにも、金融機関やBtoB関係を結んでいるパートナー企業からの信用も低下、ないし霧消してしまうこともあり、その先のビジネス展開に暗雲が立ちこめることになるばかりか、事業が立ちゆかなくなる事態にすらなりかねません。

ブランドセキュリティ、「ブランドイメージを守ること」は、きわめて重要です。

ブランドイメージが損なわれる原因

IDカードケース

ブランドイメージが毀損される要因には、第三者やライバル企業からのネガティブキャンペーンによる「風評被害」のような外的要因もありえますが、最大の要因はなんらかの「内的問題」で顧客や消費者の信頼を裏切ることにあります。ブランドイメージ毀損につながる企業内部の問題として、しばしば起こるものを具体的に挙げます。

コンプライアンスの問題

法令違反が発覚することで信用が失墜してしまう事例は、まさに枚挙にいとまがありません。

具体的には、脱税、粉飾決算などの不正経理、政官に対する贈賄などの汚職といった、金銭をめぐる不法行為があります。一部の役員や社員による不祥事ではなく「組織ぐるみ」と疑われると、たとえその容疑が固まらなくとも、世間にはそう思われてしまいます。

また、労働問題もブランドイメージを損ないます。過労死や自殺をまねく過重労働、不当解雇や不当配置転換、残業代の不払い、パワハラ、セクハラといった問題が明らかになると、誰もその企業と付き合おうという気はなくなります。

役員や社員の個人的不祥事も企業全体のブランドイメージを損なうこともあります。横領のような企業内部の問題ですら、外部に漏れればイメージダウンをもたらします。そのほか、交通法規違反による重大な事故、通退勤時の痴漢行為、万引きなども、報じられれば大問題になります。

安全管理の失敗

食品、医療・介護に関連する業種では、あつかっている製品やサービスの安全管理が重要です。産地偽装など品質をいつわって販売したり、異物混入や食中毒を引き起こしたり、サービス上の重大なミス・過誤を起こすなど、安全管理の失敗や不行き届きは消費者の信頼をいちじるしく損ないます。

その他の工業製品でも、自動車の部品不良にともなうリコール、排気性能やブレーキ性能の不正検査、あるいは携帯電話やスマートフォンの電池発火などといった、メーカー側に製造責任が問われる安全管理上の問題はブランドイメージを傷つけます。

さらには、企業からの顧客個人情報の漏洩も問題になることが多くなっています。しばしば大きく報道され、ブランドイメージを傷つけています。これも個人情報の安全管理上の問題です。

ブランドイメージの陳腐化

不正や不祥事でなくとも、企業努力の不足がブランドイメージを低下させることがあります。いわば「成功体験の硬直化」です。大きな売上を記録した商品やサービスであっても、時代のニーズに合わせて改善・更新しながら展開しないと、消費者は目をそらしてしまいます。これは、報道や風評など目で見えて耳で聞こえるきざしがあらわれないことが多いだけに、本当におそろしく、気をつけなければなりません。

ブランドの侵害

たとえば、競合するライバル企業の人気商品に似た「パクリ商品」を作って販売するといった行為、あるいはその際に、ライバル社の「商標」に文字やロゴが限りなくよく似ているラベル・タグを付けるといった行為は、「商標権の侵害」に当たります。

こうした商標権の侵害やライセンス違反は、第三者から指摘を受けるだけでもブランドイメージが低下します。さらには、他社から訴えられることもあり、裁判で負ければ金銭的補償をしなければなりません。和解でも金銭が必要です。いずれにせよ、公の法廷で商標権侵害について争う時点で、ブランドイメージは地に墜ちます。

ブランドセキュリティのためにすべきこと

セキュリティー

ブランドイメージが毀損される最大の要因は「企業内部の不祥事や問題」にあります。したがって、ブランドセキュリティとしてすべきことの第一は「不正に手を染めないこと」、「組織の問題点を正すこと」となります。

そして、顧客、消費者に対して「嘘のないビジネス」を続けることも不可欠です。嘘が露見すればブランドイメージは一気に低下します。ブランドイメージは積み上げる長期の努力に対して、崩れるのは一瞬なのです。

まっとうな商売をして、社員を大切にすること、これが第一です。その両方、もしくは片方ができないなら、その会社はビジネスモデルがおかしいのです。市場から消えるべきでしょう。

ブランドセキュリティのためにタグができること

商標マーク

ブランドセキュリティの本道は「まっとうな商売をすること」ですが、ブランドの侵害、商標権の侵害という問題についてはブランド名を公示する「ブランドタグ」にも果たすべき役割があります。

今この時代、消費者はモノやサービスを購入するにあたって、「注目・認知(Attention)→興味・関心(Interest)→検索・比較(Search)→購入(Action)→共有(Share)」という、いわゆる「AISASプロセス」をたどるのが一般的になっています。

ブランド=商標というものが重要なのは、上のプロセスの中で「Attention」、「Interest」、「Search」のプロセスで前面にあらわれ、「Action」に動機付けをあたえ、「Share」という最後の出口でも社会に開示され、つまりプロセスのすべてに密接に関わっています。

英語のことわざに「The proof of pudding is in the eating」というものがあります。日本語の「論より証拠」に当たることわざですが、直訳すれば「(おいしい)プリンだという証拠は食べてみないと得られない」といった感じです。

しかし考えてみれば、食べるからにはプリンを買わなければならないのです。ところが、買うからにはそのプリンにお金を出すだけの価値がある証拠がなければ出す気になれません。話は堂々巡りしてしまいます。

ところが現実には、多くの人がお金を出してプリンを買い、食べてなんらかの感想を持ちます。なぜお金を出すのでしょう。おいしいプリンだという証拠は与えられていないのに。

その答えが「ブランド」です。ブランド=商標が表示する「価値の信用」が、「証拠」の代わりに人々がお金を出す気にさせているのです。

すなわち、「ブランド」は「お金を出す価値のある商品・サービスである証拠」に代わるものとして、それと同等の重みをもって人々に受け止められるものです。

したがって、ブランドを表示する「タグ」や「ラベル」にも、それ相応の重みがあり、大切な任務があります。だからこそ、日本を含む世界各国で商標権を知的財産として保護する制度がうち立てられているのです。

日本では先願登録主義を基礎とする商標制度を採っています。この制度を遵守し、

  • 他社の商標権を侵害しない
  • 自社の商標権を侵害されないよう、しっかり登録する

ことが大切です。

そのうえで、社会的周知をはかるためにも、ブランドタグやラベルを利用して、世に広く堂々とブランドを知らしめましょう。ブランドタグはそのために不可欠です。